スーパー白鳥13号運行記録3

このブログは超ぐうたらワンマン運転士の日常(もはや気が向いたら、という気もw)を書いたブログです。はてなダイアリーで公開していた運行記録2が今年の春になくなるため、新たに作成しました。2005年11月4日…「運行記録2」暫定開業/2005年11月14日…「運行記録2」本格開業/2019年1月13日「運行記録3」移行開業

どうやら効果はあったようです。

 ということで、早速月マガが出たのであげてみましょうか。


 以下核心に入りますのでお気をつけください。


 多々良と真子がワルツを踊り終える。
 真子に対する拍手が轟く中、審査員の中には真子に夢中になって本来採点しなければいけない多々良のことを度忘れしている審査員もいるほど。
 清春の母で特別審査員の兵藤マリサもリーダーとしての存在感には疑問を投げつけ、仙石も多々良のパートナー本位の踊りで肝心の自分の動きが散漫になっていると思わず嘆くが、戻ってきた多々良と真子の表情を見て、もともとの多々良の趣旨からすれば上出来だと前向きに考える。
 そして多々良組の次に踊る賀寿・雫組のワルツが始まる。
 もともと三笠宮杯ラテン5位の賀寿、失格前はランキング1位の雫のコンビであり、真子と違って身長の制約のない分豪快な踊りを披露する賀寿。雫も賀寿の踊りにうまくフォローを入れていて、隙のない仕上がりになっている。
 多々良は残る3種目をノンストップで踊ることを考えてしゃがみこみながら体力の回復に努める。そこに真子がやってきて、「ワルツのリードすごく良かったですよ、この調子で全種目踊り切りましょう」と声をかける。
 多々良はふと真子に「いつごろからダンスやってるの?」と聞いてみた。多々良は準決勝で体力を消耗した時に、もっと早くダンスを始めていればよかった、と後悔していたのだ。
 それに対し真子は「4歳くらいからかな、自分でもよくわからない」と答えるが、それを聞いた仙石が「お前が賀寿を巻き込んだんだろ」と言い出す。


 本来賀寿は普通の男の子だった。
 妹の真子が「賀寿と踊りたい」と賀寿について回っていて、ある時ダンススクールの前で中を見たあと賀寿に抱きついて「お兄ちゃんとダンスをやりたい」と甘える真子を見て仕方がない、と始めたのが賀寿がダンスを始めたきっかけであった。
 そして運動能力の優れた賀寿は、他のスポーツもそれなりの選手になることになれたのに、ダンスを選んでくれてありがとう、そうプレゼンテーターに言われて、賀寿自身はこれからダンスを続けていくんだ、そう決意したのであった。


 ところが、賀寿は真子と組んでなかなか結果を出せないでいた。
 真子がトロく自己主張ができないということもあるのだろうが、それ以上に賀寿が真子を萎縮させている節もおそらくあったのだろう。
 賀寿は他のパートナーと踊ったらいいんじゃない、という提案にも、真子が必ずついてきてくれる、と信じて真子とずっと組んできたのであった。
 しかし。


 賀寿は自分が真子の魅力を引き出せないまま、自分の気持ちに従って雫とカップルになろうとした。
 その結果真子は置いてけぼりになってしまった。
 ところがその真子が多々良と組み、自分の目の前で真子の魅力を引き出されてしまった。


 その時の真子の表情を思い浮かべた瞬間、それまで快調だった雫との踊りが急におかしくなり始めた。
 雫は急に自分の動きが封じられたように感じ、賀寿は雫のタイミングがまったくわからなくなったのだ。
 その瞬間のミスはもしかしたら気づかないミスだったかもしれない。
 でも仙石も、多々良も、そして真子もそのミスに明らかに気づき、仙石は「普段から全開で踊れない癖のついた奴が慣れないテンションで飛ばすからだ、審査員は気づいているぜ」と多々良に言う。




 多々良は自分のことを殺して、あえて真子を引き立たせるリードに終始した。
 その結果、仙石に呆れられる動きの甘さをさらけ出した結果になったのだが、多々良が何のために踊ったかを仙石も承知していたので、真子の魅力を充分に引き出したこと自体は認めよう、と自分を納得させていた。
 でも対雫という意味では、雫は真子の踊りを見せられて逆にやる気を感じていたように思われるのだ。


 ところがこの踊りは、実は賀寿に突き刺さっていたのであった。
 賀寿にしてみれば、真子が自分をダンスの世界に誘い込んでくれた存在であり、少なくても「真子がいたから」自分が自分でいられたような雰囲気もあったように感じるのだ。
 ところが自分が真子に引きずられて自分の存在価値を落としていると感じた賀寿は、恋焦がれていた雫と一緒に踊ろうと画策し、ちょうど多々良が替え玉で踊った件で清春と一緒にペナルティを食らっていた雫から了解を得たところで、賀寿は浮かれてしまって自分の土台を見失っていたように感じた。
 そう、真子あっての賀寿であるということに。


 しかし多々良が真子の魅力を引き出したことで、真子が賀寿のそばにいなくてもいい状況が芽生えてきた。
 それまで「お兄ちゃんと一緒に踊りたい」と言っていた真子が、自分の元を離れるかもしれない。
 そう感じた時に、賀寿の心に不安が芽生えたのかもしれないと感じた。
 当たり前のように一緒にいた存在が、目の前から消えてしまう不安。
 自分をダンスの世界に誘い込んだ「動機」が消えてしまう不安。
 それは自分という存在が足許から崩れ去ってしまうかもしれない、それほどまでに大きな不安だったのかもしれない。


 そう思った瞬間、賀寿はそれまでの自信を一気に失ったように感じた。
 それはまだほんのちょっとしたミスでしかないけど、おそらくそれがこれから連鎖的に出てくるように感じた。
 優勝候補の自滅への前兆、なんとなくそんな印象を。




 ここからは補足。ちなみに最初にアップした時は思い出しながら書いたので微妙に表現が違うところがありまして、でチョコチョコと直しています。


 多々良の笑顔。
 恐らく自分への賞賛がないことは多々良も承知しているのであろう。
 でも決勝の舞台に上がる前に「自分の身の程は分かった、今は真子を雫以上のダンサーにしよう」と決断した多々良にしてみれば、真子への賞賛こそが自分がやってきた事に対する賞賛と感じたのだろう。