とりあえずアップが誕生日になりそうなので（笑）、今日はリアルキャラクターのお話でなく、あえてAKB49で語りたかったことをここでは書こうと思う。
つまり作者が浦山実や「浦川みのり」、そして吉永寛子から何を語りたかったか、である。
１ 夢に正直に生きることの大切さ
まずこの話の第１話で書いてあることを簡単に紹介しよう。
浦川実は吉永寛子が好きだが、その寛子がハマっているものがあると聞いて気が気でない。早速ストーカーまがいなことをして（笑）実が寛子をつけると、そこはAKB48の横アリ会場。もちろん男と一緒の気配はない。
なぜか実はオールエリアパスを拾ってあちこちウロウロしているうちに楽屋に乱入してしまったりするが、コンサートになると楽屋でいろいろやっていたメンバーの輝きに圧倒されてしまう。
そのライブの会場で寛子と会った実は、寛子から「誰にも言わないでね」と断ったうえで、「AKB48に入りたい」という夢を実に打ち明ける。その時寛子は「私があっちゃん（前田敦子）みたいになれるわけがないし、きっと諦めたほうがいいんだ、でも、それでも自分の夢にくらい素直でいたい」と語り、オーディションに出ることに笑わないでね、と実に言う。
そしてその翌日、髪を切った寛子を見た実は、寛子が本気でAKB48に入りたいんだと悟って、寛子をすぐ傍で応援してあげたい、その想いを「浦川みのり」という架空の女性に変装することで、寛子の想いを叶えさせてあげたい、それが実の「夢」になったのである。
そしてオーディション当日、浦川みのりに変装した実は、寛子の次にオーディションを受ける形になる。寛子がオーディションをしている最中に寛子の憧れであった前田敦子が入ってきて、秋元康が「途中入場とは大物だな」と聞いた時に「歌聴こえなかったからもう終わったと思って」と理由を述べる前田にショックを受けた寛子は、さすがに「好きな人は誰ですか？」と聞いた時に答えられなくて落ち込んでしまう。
それを見たみのりは頭にきて、同じ質問に対して、「あっちゃん以外です」と前田のいる前で暴言をかます。それに対してキレたのは前田ではなく寛子だった。「あっちゃんはそのままでいい、そんなあっちゃんに憧れて、夢に正直にここまで来れた」と寛子は自分の想いを語る。
何とか寛子を制止しようとしたスタッフに対し、今度はみのりが「私もAKB好きだけど、あなたには敵わないな」と寛子をフォローする。それを見た秋元康は、なかなか面白そうなヤツだと口元を緩める。
そして合格発表、寛子は「審査中の勝手な発言はペナルティ、取り返しなさい」と言われながらも合格し、実としては何とか面目が立った思いで会場を後にしようとするが、最後に秋元康の推薦によって、当の浦川みのり自身も合格となってしまう。
そう、AKB49世界の第３代センター「浦川みのり」は、こうやって誕生したのです。
その後AKB第12期研究生として仲良くなったみのりと寛子は、一緒にお守りに願い事を書いて、お互いに夢が叶ったら見せ合おうね、と約束をする。
そして寛子は「みのりと一緒にAKBの選抜に入る」と書いたが、みのりは「吉永*1をAKBのセンターにする」と書いた。
その後寛子の願い事は変わり、「みのりに勝ってAKBのセンターに立ちたい」とみのりに宣言するようになるが、逆に実（みのり）は寛子をAKBのセンターにするという目標自体は一切変えず、寛子がセンターに立てるようにするにはどうしたらいいか、それを考えながら寛子に相対していたように思う、
「AKBのセンターに立ちたい」と言いながらも「みのりに助けられすぎていた」と言って自信喪失気味になる寛子に対して、みのりはあえて全兼任の第１弾としてSKEに立つ前日の生放送で寛子に公開ビンタを張り、寛子をわざと怒らせて冷戦状態に持ち込んでしまう。
もちろん実としてはそういう事はしたくなかった。でも寛子が立派なアイドルになるために、「浦川みのり」を超えてもらわなければいけない、そして「浦川みのり」は寛子にとって超えたら神８を超えられるだけの壁でなければいけない、そうやってお互いが切磋琢磨していくことで、寛子がAKBでも確固たる立場に立てるように画策していたのである。
その極論が発表前日の歌番組の舞台裏で起こっていた寛子がみのりをビンタして罵った事件であった。もともと昨年の総選挙の時にみのりは秋元康と「みのりか寛子が８位以内に入ったら、どちらか任意のセンターの曲を書く」という約束を交わしていて、実はその時点では自分が８位以内に入って、それで権利を放棄して寛子をセンターに立たせる算段を立てていた。
しかし、寛子の「みのりに勝ってAKBのセンターに立ちたい」という宣言を聞いた時に、実は考えを改める。
「みのりに与えられたセンター」なんて寛子には納得はしないだろう。だから寛子が自力でセンターを取らないと意味がない、仮に寛子がみのりに勝っても自分がふもとにいたのでは意味がない、と考えて、歌番組の前にみのりは秋元康に会って、「もしみのりが寛子に勝ったら、みのりがセンターの曲を作って欲しい」と改めて申し出る。
しかし一方でみのりが熱でうなされている時に呟いた言葉を山本彩が聞いてしまい、それを大島優子に相談、大島は秋元康に会って、以前の「みのりか寛子が８位以内に入ったらどちらか任意のセンターの曲を書く」という約束と、「みのりは寛子をセンターにしたがっている」という想いを聞き出し、それを山本に話しているところに寛子が聞いてしまい、それで大島が寛子にも話したところ、自分も一生頑張っていたのに他人からセンターを与えられるのは潔くないと考えていた寛子が激高し、高橋みなみと一緒にいたみのりに「みのりが８位以内になったら私にセンターを譲るつもり」なのかを聞く。
みのりはこの時点では、みのりが寛子の上に立った時には寛子ではなく自分がセンターの曲を作って欲しいとお願いしている。しかしみのりはわざと、その約束を言わず、「自分が神を崩して寛子をセンターに立たせると約束した」と寛子に言い放つ。それを聞いた寛子はみのりにビンタをかましたうえで、みのりを悪しざまに罵る。
寛子にしてみれば、みのりと本気で戦いたかった。だからみのりが自分が宣戦布告したときに答えた「負けないよ」という言葉がうそをついているように思えて悔しかったのだろうと思う。
でも逆に実にしてみれば、寛子に本気で戦って欲しかった。だからこそ、その後の約束を意図的に封印して前の約束のままだと答え、わざと寛子を怒らせたのだ。
それがみのりが神を崩していったあとで、寛子がみのりを潰しにかかる図式につながり、そして最終的にみのりが９位、寛子が８位となり、寛子が８位以内に入る。
この時、寛子はわざとみのりと秋元康がした約束を盾にとって、寛子がセンターの曲ではなく、「寛子とみのり」がセンターの曲を作るよう要望、最終的にみのりと寛子のＷセンター曲「ハニー・ミルク・ラテ」ができる*2。
そしてそれはみのりの卒業生誕祭でも発揮される。
卒業生誕祭を前に実は「浦川みのりが男である」という証拠を突き付けられて、卒業生誕祭を辞退するように脅迫され、寛子も週刊宝春の安倍から「みのりの秘密を知った。卒業生誕祭には来ないだろう」と予告される。
そしてみのりは卒業生誕祭当日現れるが、最終的にはさらに脅迫されて劇場から逃げ出してしまう。一方で実の部屋に勝手に押し入った妹の雅希がみのりが兄の変装だということに気付いてAKBの楽屋に赴き、寛子を含むAKBのメンバーがみのりが実の女装であったことを知ってしまう。
AKBに男が混ざっていたことに混乱する周囲をよそに、寛子だけはみのりと実がつながったことで全てを理解することができた。そして戸賀崎に託された手紙を読んで実が自分を応援するために女装してみのりになったことを知ると、公演直前にもかかわらずみのりを探しに劇場を飛び出してしまう。
最終的に実を見つけたものの、実は脅迫のことがあってどうしてもステージに立つのを拒否する。そこで寛子は「会いたかった」を歌い、そして自分の想いを吐露する。
他人を傷つけてまで自分を偽るのは嫌だと、あえて自分が悪しざまに言われてでも仲間の有栖莉空が隠蔽したスキャンダルを自分から暴露する寛子である。
「会いたかった」で実に自分の成長の跡を見せつつ、素直になることの大切さを歌い上げ、自分の素直な気持ちを吐露する。
自分にとって「みのり」は憧れの存在であり、そして自分が大好きだったこと、自分の中に「みのり」はいて、みんなにもいると信じていること。
実に対して、自分がAKBに入りたいと言ったことに対して笑わないでいてくれたから、父親に勘当されながらも自分が見果てぬ夢を追いかけることができたこと。
そして実が寛子をセンターにしたいと思う一方で、自分もステージに立ちたいと思っていること。
だからこそ、寛子は「せめて自分の夢にくらいは素直になりなよ」そう言い切ることができたのである。
その寛子の想いを聞いたからこそ実は劇場に戻る決意をし、そして劇場に戻ってすでにみのりが男だと知っているメンバーと対面し、かつらを脱いで実として謝ったところで、みんなも実の想いを知っているからこそ、あえて「浦川みのり」として卒業生誕祭を成功させようと準備を始め、それを見て寛子の「みんなの中にも『みのり』はいる」事に気付いた実は、あえて自分も素直でなければいけないと自分が男であることを暴露しようとする。
さすがにステージ上、中継が入っているところで暴露するのはまずいと判断した戸賀崎が中継終了後に劇場にいるファンにだけ映像で暴露する形にし、実際話を聞いたファンが暴動を起こしかけるが、みのりの猛烈なファンで、実と寛子の学校の先生でもある奥平が「卒業生誕祭に少しでも不満があった人は拡散したらいい、自分は彼女から『幸せ』しかもらっていない」と言い切ったことで劇場の250人を黙らせることに成功してしまう。
こうやって見ると、「夢に正直に生きること」がどれだけこの物語の根底に流れているかがお分かりいただけるのではないかと思います。
とりあえずもう１つあるのですが、これは今日中にアップできるといいなw
*1:男の実の時に呼ぶ呼び方。「寛子」と言い出したのは、K公園のアンダーで大島優子のアンダーで出るときに、寛子から約束させられたからである
*2:なお実際の32ndシングル曲は指原莉乃がセンターの「恋のフォーチュン・クッキー」で一大ムーブメントを作ったくらいに有名な曲になったが、それを抹殺するというのもすごいお話である
