スーパー白鳥13号運行記録3

このブログは超ぐうたらワンマン運転士の日常(もはや気が向いたら、という気もw)を書いたブログです。はてなダイアリーで公開していた運行記録2が今年の春になくなるため、新たに作成しました。2005年11月4日…「運行記録2」暫定開業/2005年11月14日…「運行記録2」本格開業/2019年1月13日「運行記録3」移行開業

W杯開幕戦で西村主審が示したもの

 W杯が12日サンパウロで、ブラジル対クロアチアの開幕戦をきっかけに始まった。
 この開幕戦では優勝候補の一角であるブラジルの初戦であると同時に、W杯で初めて日本人が開幕戦をジャッジするという歴史的な試合でもあった。
 結果としてはブラジルが3-1でクロアチアを破り、W杯最多の6度目制覇に向けて順調に足を記したが、同時に議論を呼ぶ試合でもあったようである。
 その議論は69分、のちにネイマールの逆転弾につながる1つのファールであった。
 右サイドからのグラウンダーのクロスをブラジルFWフレッジがゴールに背を向けてパスを受ける。そこにクロアチアDFデヤン・ロブレンが背後のゴール側からフレッジにアタックをかけ、そこでフレッジが倒れる。
 それに対し西村雄一主審が笛を鳴らし、ゴールライン際に回り込みながらPKの指示を出し、ロブレンにイエローカードを出した。
 このジャッジに対して「PKは重すぎるのでは」「西村は誤審をした」などと世界中から議論が沸き起こっているのだ。


 このジャッジメントについて、私が動画を確認したところではこんな感じであった。
 1 実際にロブレンはフレッジの左肩を掴み、右腕でフレッジの右腕をロックするようなプレイをしている。
 2 それに対しフレッジは若干早いタイミングで倒れこんだ。


 ここで改めて競技規則を紐解こう。


<FIFAサッカー競技規則>
直接フリーキック
 競技者が次の7項目の反則のいずれかを不用意に、無謀にまたは過剰な力で犯したと主審が判断した場合、直接フリーキックが相手チームに与えられる。
  相手競技者をける、またはけろうとする。
  相手競技者をつまずかせる、またはつまずかせようとする。
  相手競技者に飛びかかる。
  相手競技者をチャージする。
  相手競技者を打つ、または打とうとする。
  相手競技者を押す。
  相手競技者にタックルする。
 次の3項目の反則のいずれかを犯した場合も、直接フリーキックが相手チームに与えられる。
  相手競技者を押さえる。
  相手競技者につばを吐く。
  ボールを意図的に手または腕で扱う(ゴールキーパーが自分のペナルティーエリア内にあるボールを扱う場合を除く)。


ペナルティーキック
 ボールがインプレー中に、競技者が自分のペナルティーエリア内で上記の10項目の反則のいずれかを犯した場合、ボールの位置に関係なく、ペナルティーキックが与えられる。


警告となる反則
 競技者は、次の7項目の反則のいずれかを犯した場合、警告され、イエローカードを示される。
  反スポーツ的行為
  言葉または行動による異議
  繰り返し競技規則に違反する
  プレーの再開を遅らせる
  コーナーキックフリーキックまたはスローインでプレーが再開されるときに規定の距離を守らない
  主審の承認を得ず、フィールドに入る、または復帰する
  主審の承認を得ず、意図的にフィールドから離れる


 言うまでもないが西村主審だって人間である。ミスをすることはあるという前提で話をするが。
 まず西村主審の判断については競技規則を見る限りでは正当であったと考えられる。
 実際フレッジ選手の倒れ方がシミュレーションっぽい倒れ方をしているので紛らわしく感じるが、少なくても西村主審の位置からはフレッジをロブレンが左肩を掴むところは見えていたはずである。その時点で「相手競技者を押さえる」という直接FKの要件は満たすことになる。
 そして右腕のロックの動きを見れば、相手競技者の妨害と捉えられてもおかしくはない。
 そこで直接FKの要件が満たされたので笛を吹いた。そしてそれがペナルティーエリア内で起こったのでPKになった。それだけである。
 ここで注意してほしいのは、あくまでもPKの基準は「ペナルティエリア内で起こった直接FKに相当するファウル」であり、PK自体が重いペナルティではないのだということ。
 だからペナルティの軽重にかかわらず、ペナルティエリア内でゴール側競技者が起こした直接FKに相当するファウルは100%PKになるのだ。
 ちなみにロブレンへのイエローは、恐らく流れの中で「腕を使ってのファウルに対しての警告」をチームに対してアクションを起こしていた中で起こったファウルなので、「繰り返しの競技規則違反」でとったように考えられる。


 開幕戦の審判は、W杯の審判の流れを判断する基準となる審判である。
 西村さんはJの中でも特に秀でた審判ではないと思っているけど、競技規則を精通しているからこそ開幕戦の主審に起用されたと考えているし。
 そして西村主審はこの試合で次のメッセージを残したと考えられる。
「相手がどんな選手であろうと、毅然としたジャッジメントをすべき」(最初にネイマールにイエローを突き付けたことに対して)
「ヨーロッパ、南米などのジャッジメントの流れにこだわらず、FIFA競技規則を厳格に適用すべき」
「サッカーが基本的に手を使わない競技である以上、手を使っての反則は特に厳格にとる」
 実際このファウルの後、守備陣は異様に手を使わない守備をしていたけど、それが滑稽であっても、それがFIFAの基準であり、W杯基準だといわれれば従わなければいけないのだ。ヨーロッパや南米の「地域リーグ」のジャッジメントと同じではない、それをきちんとわからせないといけない試合なのだ。
 もちろん西村主審にもミスはあるから、試合全般でも不満に感じるジャッジメントもあったと思うけど、少なくてもこのプレイに関しては、西村主審が起こしたアクションは正しいと思うし、その中にある意図は確実に伝わったと感じた。


 でもオランダが前回優勝のスペインに5-1とか、今年のW杯は異様な空気を感じますね。