最近話題を賑わしているものがあります。
「ビッグスピリッツ」で掲載されている「美味しんぼ」について、福島第一原発の放射線漏れ事故に伴う描写がありましたが、それが現在大きな話題になっています。
まず話題になったのが、主人公の山岡士郎が福島第一原発を取材した後に疲労感を訴え、鼻血を出すという内容。さらにそれに対して、前双葉町長・井戸川克隆氏が「被曝によるもの」と断じた上で、
井戸川氏「私が思うに、福島に鼻血が出たり、ひどい疲労感で苦しむ人が大勢いるのは、被ばくしたからですよ」「前町長として双葉町の町民に福島県には住むなと言っている」
元岐阜大助教授・松井英介医師「大阪で、受け入れたガレキを処理する焼却場の近くに住む住人1000人にほどを対象に、お母さんたちが調査したところ、放射線だけの影響と断定はできませんが、眼や呼吸器系の症状が出ています。」
福島大荒木田岳准教授「福島を広域に除染して人が住めるようにするなんて、できないと私は思います」
と発言が続く。
この発言に対して風評被害ではないかとやり玉に挙げられているわけです。
個人的にはこの話自体を私は批評はできませんし、原作者による取材、あるいはここに挙げた方々が事実と証言している以上、この事について私が「この話はおかしい」と断ずることはできません。
かつて修学旅行でヒロシマの原爆の恐ろしさを目の当たりにした私にしてみれば、放射線被曝の恐ろしさは決して侮れるものではないからです。
ただ私は、この話については、ある意味で風評被害を与えているとも断じています。
これから書くのは、福島第一原発からの各市役所(町村役場)への距離です。
双葉町(浜) 3.5km
大野町(浜) 4.8km
富岡町(浜) 8.7km
浪江町(浜) 9km
川内村(浜) 22km
広野町(浜) 23km
南相馬市(原ノ町)(浜) 25km
小野町(中) 39km
田村市(中) 41km
相馬市(浜) 43km
いわき市(浜) 43km
二本松市(中) 56km
郡山市(中) 59km
宮城県丸森町 59km
石川町(中) 60km
須賀川市(中) 60km
福島市(中) 62km
宮城県角田市 64km
宮城県亘理市 70km
茨城県北茨城市 73km
宮城県白石市 74km
宮城県岩沼市 77km
白河市(中) 80km
猪苗代町(会) 83km
茨城県高萩市 83km
茨城県大子町 94km
宮城県仙台市 95km
茨城県日立市 97km
会津若松市(会) 98km(117km)
山形県米沢市 98km
喜多方市(会) 105km(115km)
南会津町(会) 114km(107km)
西会津町(会) 124km(94km)
茨城県水戸市 127km
只見町(会) 152km(63km)
福島県って意外に広いんですよ。そして福島第一原発は東端の地域、俗に浜通りですから、そこから福島県内というと半端ない広さなんです。
言うまでもなく浜通りは問題が多すぎますし、そこに住めない可能性が高いというのは肯定できます。そして中通りでも小野や田村でも50kmはありません。福島、二本松、郡山、須賀川、石川あたりが60kmエリア。
でもこの60kmエリアのところにもう宮城県の丸森や角田があるのです。
白河は80kmエリアですが、もうこのあたりだと宮城県南部の亘理、白石、岩沼や茨城県北部の北茨城なんかもエリアに突っ込んでいます。
で会津地方になると、100km圏の会津若松が住めないとなると、もう茨城県日立、山形県米沢だけでなく、東北一の大都市・仙台すら入ってしまうのですよ。
さらに福島県の奥地・只見にいたっては水戸よりはるかに遠い。
でカッコで示したが、会津地方などは、それこそ福島第一原発以上に新潟県の柏崎刈羽原発の影響が強いエリアも少なくありません。偏西風の影響も考えれば、明らかに会津若松は距離が遠くても偏西風にとって逆方向(東側)の福島第一よりも順方向(西側)の柏崎刈羽の方が影響が強いとも考えられるでしょう。
そういった地勢を考えたうえで「福島県が住めない」のなら、「仙台にも住むな」と言わないとおかしいですよねw
安易に「福島県に住むな」というから、福島原発に関係がない会津地方ですら原発の影響を受けているといわれてしまう。それなら日立や米沢・仙台だって住めないという距離であるにもかかわらず。
そういう意見に対して、「福島県を名乗っているから危ない」という意見もあるが、それならちゃんと地図を見ろよ、と言いたい。距離が離れている県内の会津若松よりも距離が近い県外の白石が安全って、そんなバカな話などないんですよ。
だからこそ、ちゃんと言葉を精選する必要があるのです。福島県の首長経験者や福島大学の准教授が、自分のいた土地の地勢をきちんと踏まえずに安易に言うから、風評被害が起きるのですよ。
そういう意味では原作者の雁屋さんも出版社の小学館も同罪。すべての責任は私にあると雁屋さんが言っていて、それはそれで立派な態度だと思うが、やはり出版にゴーサインを出した小学館にも責任があると思います。
以上私の見解でした。